誰もがハマる思考の落とし穴(2)

2014年02月23日05:56

前回に引き続き、
「なぜ、間違えたのか?~誰もがハマる52の思考の落とし穴」から、
今回は医療現場でよく見られる「思考のワナ」について見てみたいと思います。

先ずは「権威のワナ」です。
これはあまりにも当たり前すぎるがゆえに、
誰もが知らず知らずのうちにハマってしまっているワナのひとつです。
その意味していることはいたってシンプルです。
人は権威のある人が言うことをつい信じてしまうというものです。

素人の意見には慎重になるのに、
専門家が言う意見には、たとえ疑問を感じていたとしても、
その言葉を信じ受け入れてしまうというものです。

これを実証したのがミルグラムの実験です。
これは、被験者が教授の指示に従って、
ガラス窓の向こう側に座っている人に電気ショックを与えるという実験です。
電圧は15ボルトから始まり、少しずつ上げていき
死に至る危険があるとされている450ボルトまで上げていきます。
その間、ガラス越しに見える人は苦痛に叫び声を上げ、
恐れおののき震えているのですが、
実際はすべて演技であり電流も流されていません。

被験者が実験を中断しようとすると、教授は落ち着いた声でこう指示します。
「そのまま続けてください。実験は続けることに意味があります」
するとたいていの被験者は実験を続け、
しかも半数以上が、最大である450ボルトまで電圧を上げたというのです。

このように、自分は疑問に思っていたとしても、権威のある人から言われると、
専門家は自分の知らないことをたくさん知っているのだから
きっと正しい判断をしているに違いないと思ってしまい、
その意見に従ってしまうのです。

白衣を着た医者はその象徴的存在と言えます。
例えば皆さんが病気になり、医者の治療を受けたとしましょう。
その医者が「病気の原因は汚れた血が原因なのでこれを抜きましょう」と言って、
血液を2リットル抜いたらどうなるでしょうか。
たいていの人は死にます。

医者はそんなバカなことをするわけがないと思われるかもしれませんが、
アメリカ初代大統領のワシントンは
当時の名医といわれていた医者に合計4回、約2リットルの血を抜かれ、
失血死したと言われています。

この血を抜く方法は瀉血(しゃけつ)と言われ、
18世紀頃までの西洋医学の中心的な治療法でした。
しかし権威のある医者の言うことは正しいと思われていたので、
誰もがそれでよくなると信じ、瀉血療法を受け入れ、
その結果たくさんの患者さんが衰弱し、死んでいったのでした。
医者のすることは、患者がたとえ疑問を感じたとしても
それを受け入れてしまうというのが、まさにこの「権威のワナ」なのです。

専門家はそれなりの知識や経験がありますが、
しかしその一方で専門家もまた同じように、
多くの思考のワナにはまっているのです。
そのひとつが「社会的証明のワナ」です。
これは周囲の人の意見がみな同じであれば、
自分もその意見に合わせてしまうという思考のクセのことです。

例えば、医者の中には
一般的に行われている標準的な治療に疑問を感じている人もいます。
抗がん剤治療などがそのよい例です。

通常の抗がん剤治療に疑問を感じていたとしても、
周囲の医者が当然のごとく、がん患者さんに抗がん剤治療をしているならば、
やはり自分も抗がん剤治療をしないとけないと思ってしまうのです。
本当にこんなことをして意味があるのだろうか、
患者さんにとって本当によいことなのだろうかという疑問を持ちながらも、
もし抗がん剤治療をしないで患者さんが亡くなり
訴えられるようなことになったらどうしようというような不安がよぎると、
治療に対する懐疑心がありながらも、抗がん剤治療をすることになるのです。

この「社会的証明のワナ」は、
株式市場の動向やファッションの流行、ダイエットブーム等々、
様々な場面でこの現象は見られます。

これにも面白い実験があります。
被験者に4cm程度の長さの直線を見せます。
その後、A、B、Cと3本の直線が書かれた1枚の紙を見せられ、
最初に見せた直線と同じ長さの直線は、この3本のうちのどれでしょうと問われる。
Aはやや短く、Cはやや長いので、
正解はBであることは普通の人ならわかるようになっています。
ところがサクラの被験者7名が次々とAだと答えると、
自分も段々自信がなくなり、結局Aと答えてしまう人が30%もいるというのです。

このように自分は違うと思っても、周りの人みんなに正しいと言われてしまうと
自分の意見を変えて周りに合わせる傾向が人にはあるのです。
もちろん自分の意見を最後まで貫く人はいますが、
その人は英雄になるか、つまはじきにされるかのどちらかです。

う~ん、今回も二つしか紹介できませんでした。
他にもたくさんの「思考のワナ」がありますが
またの機会にします。

きっとこのブログを読んで、そうかと思ってくださった人もいることでしょう。
でも、もしかしたらあなたも「権威のワナ」に陥っていませんか?




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テーマ : モノの見方、考え方。
ジャンル : 心と身体

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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