誰もがハマる思考のワナ(1)

2014年01月24日07:04

久しぶりに面白いと思える本を読んだので紹介します。
「なぜ、間違えたのか?~誰もがハマる52の思考の落とし穴」です。
この本には、私たちが日常生活や仕事で
知らず知らずのうちに陥り、
物事の判断を誤らせてしまう思考のクセが
52項目にもわたって書かれています。

例えば専門家の言うことは正しいと思ってしまうとか、
自分にとって都合の悪い事実はすぐに忘れてしまうなど、
言われてみると、確かにそうだと思えるものがたくさんありました。

逆にそれをうまく利用することで
自分にとって都合のよいコミュニケーションを取ることもできるので、
その意味でもとても興味深く、役立つ本でした。

52項目の最初に紹介されていたのは「生き残りのワナ」です。
イチロー選手やビル・ゲイツ、村上春樹といった超一流の人たちを見て、
自分もいつか一流になって成功したいと思い、
スポーツにせよ事業にせよ、小説にせよ、
自分が目指すものに一生懸命に打ち込み、努力する人たちがたくさんいます。
人は、自分もがんばれば、一流とまではいかないまでも
それなりの成功くらいは収められると思うものです。
ところが現実には、成功を収められる人というのはほんの一握りであり、
ほとんどの場合、自分が思い描いていたような成功をつかむことなどできません。

成功は大々的に取り上げられ目立つのに対し、
失敗はほとんど表には出てこないため全く目立ちません。
そのため人は、目立つ成功ばかりに目が向いてしまい、
自分も成功できると、ついつい過大評価してしまうのです。
これが「生き残りのワナ」という思考のクセです。

ベストセラー作家1人の陰には本が売れなかった作家100人がおり、
売れなかった作家1人の陰には出版者を見つけられなかった人100人がおり、
出版者を見つけられなかった人たち一人ひとりの陰には
書きかけの原稿を引出にしまったままの人がそれぞれ100人控えています。

つまりベストセラー作家という成功例ばかりを見ていると、
自分も努力すればベストセラー作家になれるかもしれないと
思えてしまうのかもしれませんが、
現実はそう甘くはないということです。
夢を抱くのは自由であり、それに一心不乱に突き進むというのもよいのですが、
どこかで現実の壁にぶつかったとき、夢をもう一度見なおす勇気も必要なのです。

私も、単行本5冊、共著3冊、共訳書3冊さらにNHKからCDも出していますが、
すべて含めて、昨年一年間に入った印税は、な、な、なんと11,376円でした。
印税生活なんて夢の夢のまた夢です。これが現実です。
もっとも作家で生活していこうなんていう気はさらさらありませんが。

一方、人は夢や希望を抱き、
それに対して多大な労力と時間、お金をつぎ込んでいると、
今さら途中であきらめるなんてできないと思ってしまう傾向もあります。
これが「サンクコストのワナ」と言われる落とし穴です。

かつてイギリスとフランスは、
コンコルドの開発という共同プロジェクトを立ち上げましたが、
両国とも超音速旅客機は決して採算が取れないという事実に
早くから気づいていました。
しかし途中でやめる方が正しいと分かっていても
すでに投じられた巨額の資金のことを考えると
なかなか開発を断念することができませんでした。
これがサンクコストのワナであり、別名を「コンコルドの誤謬」とも言います。

このように、何か実現したいと思うことに対して
多大な時間やエネルギー、資金の投入などをしていると
それを無駄にしたくないという心理が働き、
無理だとわかっていてもなかなかやめられないのです。

私が予備校に行っていたとき、有名な浪人生がいました。
彼は毎年、東大医学部を受験するのですがいつも失敗。
でも決してあきらめることなく受験し続けました。
その結果、私が同じクラスになったときにはすでに10浪目でした。
彼も、ここまでがんばってきたのだからあきらめるわけにはいかないという
サンクコストのワナにはまってしまったのでしょう。
東大以外の医学部なら入れたのではないかと思うのですが‥。

一方、私たちが日常生活の中で
ごく普通にやっている思考のクセに「確証のワナ」というのがあります。
これは何か新しい情報が入ってきたときには
自分の都合のよいように理解・解釈し、
自分の考えと合わないものはスルーしてしまうという脳のクセのことです。

あるダイエット法を試してみて、少し体重が減ると
この方法はやっぱりいいかもしれないと思い、喜びますが、
逆に体重が少し増えると、時にはそんなこともあろうと、
その事実はスルーされてしまいます。

天気の悪い日は神経痛が悪化すると思っている患者さんは、
天気が悪い日に神経痛が悪化すると、ほら、やっぱりそうだ、と思います。
一方、晴れた日に神経痛がでたり、雨の日に神経痛が悪化しなかったりしても
それらの事実はスルーされてしまい、記憶からすぐに忘れ去られてしまうのです。
その結果、「天気の悪い日には必ず神経痛が悪化する」と
確信するようになります。

逆に、この心理をうまく利用しているのが占い師です。
人は自分のことを占ってもらいたいと思って、占い師のところに行きます。
その占い師が「あなたは今、人間関係の問題で悩んでいますね」と言うと、
たいていの場合は当たります。
なぜならば、人間関係と言っても実際にはピンキリであり、
ほとんどの人は家庭や職場に大なり小なりそのような問題を持っているからです。
たとえ思い当たるようなトラブルがなかったとしても、
そう言いえば、先日会議で同僚とちょっと言い合いになったけど
もしかしたらそのことを言っているのかもしれないなあと、
勝手に拡大解釈し、この占い師は当たると思ってしまうのです。

また、そのような事実が全く思い当たらず、
今回は当たらなかったなあと思ったとしても
「過去には人間関係の悩みを抱えていましたよね」と占い師に言われれば、
ほとんどの人は、それには「はい」と答えるでしょう。
その後あれこれ話をしながらタイミングを見計らって、今度は
「あなたは将来のことで悩んでいますね」と言われたら、
これまた先程と同様のパターンで、かなりの確率で当たります。
人間関係に問題があるという読みがはずれていても、こちらが当たっていれば、
「今、人間関係の問題で悩んでいますね」と言った先程の間違った読みは
きれいに忘れ去られ、
やっぱりこの占い師は当たる、と思わせられてしまうことになります。

このように言われたことを都合のよいように解釈し、
都合の悪いものはきれいに忘れてしまう、
そんな心理が人には働くのです。
占い師は、人の持つこの心理特性を上手に利用して、
人の心を読んだり、未来を当てたりしているのです。
これなどは、人がしばしば陥る「確証のワナ」を上手に利用した例と言えましょう。

もっと色々と面白い思考のワナがあるのですが、
今回は3つしか紹介できませんでした。
他のものは、いずれまたの機会にご紹介させて頂きます。
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ジャンル : 本・雑誌

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  • 2014年01月24日 17:40 |
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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