痛みに対する心へのアプローチ

2011年02月17日16:26

先月、カウンセリングルーム「ひまわりの部屋」の
森津純子先生とお会して色々なお話をお伺いしてきました。
自分から人に会いに行くという経験は本当に久しぶりでした。

彼女は、以前キリスト教系と仏教系の両方の病院で
ホスピス医として働いていた経験を持っており、
その後1997年に独立し、
カウンセリング専門の診療所「ひまわりクリニック」を開業しました。
今年からは「クリニック」という名称も取ってしまい、
一般のカウンセリングルーム「ひまわりの部屋」として、
日々、様々な人の悩みに耳を傾けています。

私は以前、本などを読んでこの人に会いたいと思うような人がいたら
すぐさま連絡を取り、よく会いに行っていました。
なかなか会えそうでない人でも、是非会いたいという思いを持っていると
何故か会えるチャンスが訪れるのです。
例えばキュ―ブラ・ロスやアンドルー・ワイル、カール・サイモントン、
フリッチョフ・カプラ、ライワル・ワトソンなどがそうでした。
どの人たちも意図して会ったのではなく、
偶然の導きのような形で出会うことができました。
キュ―ブラ・ロスとは名古屋の喫茶店で話をし、
アンドルー・ワイルとは福岡の居酒屋さんで、
カール・サイモントンとは京都の居酒屋さんで酒を飲み交わしました。

ところが、自分も本を書くようになった30代の終わり頃から、
こちらから会いに行くということはめっきりなくなってしまいました。
年を取るにつれ、純粋な気持ちが薄れてきたのかもしれません。
でも今回は彼女の本を読んで、久しぶりに会ってみたいと思ったので
アポイントを取って東京まで森津先生に会いに行きました。

彼女はホスピス医と心療内科医という二つの肩書きを持っているのですが、
これは私と一緒であり、その点はとても親しみが持てました。
実は、私は以前から今の緩和ケアのあり方に違和感を覚えていたのですが、
彼女と話しをしたら、私のこの漠然とした違和感を解消するための
何かヒントがもらえるのではないかと思ったのです。

緩和ケアは、がん患者さんの苦痛を取ることが主な目的ですが、
そのさい、モルヒネをはじめとするたくさんの薬を使います。
私は心療内科時代から薬で症状を取るという発想が
あまり好きではありませんでした。
ところが緩和ケアに来ると、相手は末期のがん患者さんばかりです。
がんの痛みに対しては当然モルヒネなどの薬を頻繁に使います。
痛み以外でも、症状があればすぐ薬を使って抑え込みます。
少しでも楽になってもらうことが主目的ですので
そうせざるを得ないことはわかっていながらも、
どこか抵抗を感じずにはいられなかったのです。

ところが森津先生にその話をしたところ、
彼女は心へのアプローチをすることで
がんの痛みも取ることができると言うのです!
これは目から鱗でした!
私は心療内科にいたとき、よく慢性疼痛の患者さんを診ていました。
何年もの間、どんな薬を使っても痛みが取れず、
にっちもさっちもいかないような患者さんでも
心の治癒力をうまく引きだすというアプローチをすることで、
痛みが消えるという経験をたくさんしてきました。
しかしそれはあくまでも慢性疼痛の患者さんであり、
同様のアプローチががん性疼痛にも通用するとは思ってもみませんでした。

しかし彼女は、いくらモルヒネを増やしても
痛みが取れないような患者さんに対して、
痛みの意味やメッセージに気づいてもらうような対話をすることで
信じられないほど痛みが軽減したという経験を多々しているのです。
実際、大量のモルヒネを使っていた患者さんで、
ほとんど薬がいらなくなった症例もあるというのです。

これは一般の人にとっては信じられないことかもしれませんが、
がんですら消してしまうほどの力を持っている心の、
その秘められたエネルギーのすごさをよく知っている私にとって、
この話しはすんなりと入ってきました。

今まで私は、がんの痛みはモルヒネを使わないと取れないと思っていました。
これは緩和ケアでの常識です。
逆に心へのアプローチをすればモルヒネはいらなくなるなどと言えば、
確実に非難され、異端視されるのは明らかです。
実際、彼女もずいぶんと看護師さんとぶつかったようです。

でも、がん患者さんの身体症状であったとしても、
上手に心のアプローチをすることによって
薬をゼロではないにせよ、かなり減らすことができるとしたならば
喜ぶ患者さんは少なからずいるでしょうし、
そこには緩和ケアの新た可能性が見えてくるような気がするのです。
こんなことを考えるだけでも、私はとてもワクワクします。

森津先生は痛みの意味に気づいてもらうというアプローチをしていましたが、
すべての患者さんにこの方法が通用するとは思っていません。
もちろん従来のようにモルヒネが必要な患者さんもたくさんいます。
ですから今後どのようにして心へのアプローチと薬物療法を統合していくかが
これからの大きな課題になっていくと思います。

今回、久しぶりにエキサイティングな話しができる医者に出会えて、
私自身もとてもエネルギーをもらうことができました。
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ジャンル : 心と身体

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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