私の歴史(3)~緩和ケア時代その1

2010年11月11日18:37

私は平成14年11月に彦根市立病院緩和ケア科部長として赴任した。
実は、それまで緩和ケアに関しての知識は全くなかった。
モルヒネすら使ったことがなかったのでとりあえず勉強した。

赴任する直前に1週間だけ時間をもらい、
京都にあるバプテスト病院のホスピスに通った。
今は聖路加国際病院の緩和ケア科医長になっている林章敏先生が
当時はそこにいたので、1週間ずっと張り付いて
みっちりと勉強させてもらった。
おかげで薬剤の使い方の基本くらいはできるようになった。

その1週間後には彦根市立病院の緩和ケア病棟で働いていた。
何もかもが初めてだったので最初は緊張していた。
しかし、そのうちすぐに慣れた。
わからないことがあれば、すぐに林先生に電話して聞いた。
三ヶ月くらい経った頃には、ほとんど一人で対応できるようになった。

薬の使い方はある程度マニュアルがあるので、
それに従って使ったらよいわけだから、さほど難しくない。
ちょっと勉強さえすれば誰にでもできる。
あとは経験を積むだけのことだ。

心療内科はそういうわけにはいかない。
安定剤や抗うつ剤の使い方を身につけることはさほど難しくはないが、
コミュニケーションや治療的なかかわり、心理療法といったものは
知識を詰め込んだだけでは、全く使い物にならない。
一人一人の患者さんと丁寧にかかわりながら、
その都度、試行錯誤を繰り返しつつ身に付けていくしかないのだ。
その意味で、心療内科はそう簡単に身につけられるものではないというわけだ。

私の場合、心療内科でそれなりの経験を積んできていたので
患者さんとのコミュニケーションに関しては全く問題を感じなかった。
逆に、心療内科で様々な患者さんと関わってきた私にとって
緩和ケアの患者さんはあまりに大人しすぎて物足りなさを感じたくらいだ。

私は、他にはない緩和ケアを作りたいと思っていた。
そのため、先ずは自分なりにできることを色々とやった。
最初はアロマセラピーやカラーセラピーといった
各種代替療法を積極的に取り入れていった。
幸い、私の考えに賛同してボランティアとして来てくれる人がたくさんいた。
治療的な代替療法も必要に応じて取り入れた。
丸山ワクチンやホメオパシーなどはよく使っていた。

またがん患者さんとその家族のためのグループ療法も始めた。
一般のがん患者さんがたくさん来た。
平成17年2月には築地書館から
「がんばばらず、あきらめない がんの緩和医療」という本も出した。
講演も積極的にこなしたし、学会でも発表した。
自分なりにずいぶんとやっていたと思う。

でも時間が経つにつれて、段々とストレスが貯まってきた。
最初の一年半は2時間近くかけて電車で通勤していた。
呼び出されて車で飛ばしても1時間近くかかった。
夜中の呼び出しもあった。
24時間常に拘束されていた。
病棟でも時々ナースと意見が合わないこともあった。

そんなことの積み重ねがローブローのように段々とこたえてきた。
緩和に移ってから三年くらいがたった頃だ。
つまらないことでイライラするようになってきたのだ。
心療内科時代までは、ほとんどストレスを感じた経験がなかった。
緩和に来て初めて、ストレスというものを認識した。
それを心療内科時代の同僚に言ったら笑われた。
「それでよく、心療内科をやっていたな」と。

でもその危機状況は何とか乗り越えられた。
嘱託医の田村先生も来るようになったせいかもしれない。
話し相手がいるだけでずいぶんと違ってくる。
田村先生は私に影響を受けたこともあり
代替療法や心理療法にとても関心を持ち始めた。
それがきっかけでサイモントン療法に出会い、今でも熱心に活動している。

一回目の危機状況は何とか乗り越え、それから五年の歳月が経った。
そして今、再び危機状況に陥っている。
田村先生もサイモントン療法などの活動が忙しくなり、
あまり病院には来られなくなってしまった。
現在は滋賀医大に移ったこともあり月に一度くらいしか来ていない。

特にこの数年は、とてもストレスを感じるようになり、すぐ怒るようになった。
もともと穏和な性格なので、怒るなんて自分でも信じられなかった。
ストレスがこんなにも人を変えてしまうということを身をもって知った。
何でこんなにストレスが貯まるのかをずいぶんと考えた。
引き金になることは色々あるが、ある時ふと気づいた。
自分は緩和ケアには向いてない人間だということに…。
To be continued
スポンサーサイト

テーマ : 足跡
ジャンル : ブログ

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

最新記事

検索フォーム

QRコード

QRコード