「インビクタス~負けざる者たち」を見て

2010年02月17日18:02

これは南アフリカ初の黒人大統領になった
ネルソン・マンデラの奇跡の実話を映画化したものだ。
以前、他の映画を見に行ったとき
この映画の1分足らずの予告編を見たのだが、
私はそれで泣いていた。
内容も分からないのに、なぜか感動したのだ。
それ程までに心震える映画だった。

1994年、マンデラが大統領に就任したとき
黒人たちは熱い喜びをもって、白人たちは激しい怒りで彼を迎えた。
マンデラは白人による前政権に27年もの長きにわたり投獄され、
幅2メートル、奥行き2.5メートルほどの独房で
収容所生活を余儀なくされた。
そのマンデラが1990年に釈放され、アパルトヘイトが完全撤廃され、
そして1994年にマンデラが大統領に就任したのだ。

白人たちは、黒人による独裁やアパルトヘイト時代の報復を恐れ、
国外脱出する者も多かった。
しかし報復も混乱も独裁もなかった。
マンデラは山積された多くの問題を解決していくためには
対立する黒人と白人とをひとつにすること、
これがマンデラの強い思いであり願いでもあった。

そのため彼は黒人で固められていた新政権の大統領警護班に
4人の白人を追加配属した。
反発する護衛班責任者に対してマンデラは
「赦しが魂を自由にする」と諭した。

普通の人間にはとてもできることではない。
27年ものあいだ投獄された白人を赦すことができるなんて。
しかし彼はそれを実行したのだ。
彼は一貫して、皮膚の色で人を評価する社会ではなく
能力や努力で評価される社会を目指していた。
だからこそ白人というだけの理由で、
彼らを敵視することはなかったのだ。

黒人と白人をひとつにするために彼はラグビーに目をつけた。
当時、ラグビーは白人が愛好するスポーツであり、
黒人にとってはアパルトヘイトの象徴であった。
そのため黒人は誰もが対戦相手の方を応援していた。
そんな状況の中、95年にラグビー・ワールドカップが幕を開けた。

その決勝戦で、マンデラは自国のチームのジャージを着て現れた。
南アフリカの黒人にとって、
そのジャージはずっと受け入れがたいものだった。
それをマンデラが着てグランドに現れたのだ。
そして選手一人ひとり握手をした。

アパルトヘイトの象徴であるラグビーを観戦し、
しかもそのジャージまで自分がまとうというのは、
黒人と白人とがひとつになることが必要だという
マンデラの国民へのメッセージに他ならない。

自分が大統領になり、かつての敵をどのようにすることもできたはずだ。
しかしマンデラは、敵を立てながら、その中に自ら入っていった。
そして敵を仲間にしてしまったのだ。
そのような彼の行動を見て、
南アの黒人と白人もお互いを赦し、ひとつになっていったのだ。

ふと、今の自分の周囲を見回してみた。
ちょっとしたことで、お互いが敵対している。
思想や考え方の違いで、お互いを強く非難している。
自分に都合が悪い人がいれば、追い出そうとしている。
マンデラの態度とは、あまりにもかけ離れた現実がそこにはある。

2月21日に死の臨床研究会近畿支部主催で
「スピリチュアルケアの新たなる可能性を求めて」
というテーマで大会を開く。
そこにはホスピスや緩和医療の関係者がたくさん来る。
演者の一人として江原啓之さんも来る。

緩和ケア領域で活躍している著名な先生方は、
江原さんのことを嫌っている人が多い。
理由はいろいろあると思うが、
私はスピリチュアルケアを実践していく上において、
様々な関わりや考え方があってもよいのではないかと思っている。

それを、ただ一方的に批判、排斥しようとするのは
皮膚の色で人を差別しているのと同じようなものだ。
その人が持っている人間性や信念、行動にも目を向け
その人物をもっと理解しようとする姿勢があるならば、
スピリチュアルケアのあり方も傾聴一辺倒ではなく、
もっと多種多様な関わり方が共存するようになるのではないだろうか。
マンデラが望んでいた「虹の国」のように。
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テーマ : インビクタス~負けざる者たち~
ジャンル : 映画

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  • 2014年12月18日 17:51 |
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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