面白い?患者さん十人十色

2016年05月08日05:42

患者さんと話をしていると、
この患者さんは面白い!と思える人が時々います。

先日、90歳を過ぎた肺がんの患者さんが外来に来ました。
とても陽気で元気そうに見える患者さんでした。
彼の話が面白かったんです。

「私は90歳までたばこを吸っていたんですが、
みんなから言われたもんで、1年間禁煙したんです。
そしたら検診でひっかかり、検査をすると肺がんだと言われました。
禁煙したら肺がんになったので、それだったら吸ってやれと思い、
その日からまたたばこを吸い始めました」

禁煙したら肺がんになったので、また吸い始めたという話を聞いて、
私も思わず笑ってしまいました。
この患者さんは、人間はいつか死ぬんだから、もう治療はせん、
あとは好きなことやって死にますわ、と言いながら、
外来をあとにしました。

また、こんな患者さんもいました。
40代の卵巣がんの女性でしたが、
医者からは手術や抗がん剤を強く勧められましたが、
子供を産みたいという思いを捨てきれず、
ずっと手術や抗がん剤治療を拒んできました。

しかし次第に状況が悪化、がんが全身に広がり、
すでに治療ができるような状態ではなくなってしまいました。
そのため、今後は緩和ケアで診てもらって下さいと言われ、
緩和ケアのある病院をいくつか受診したのですが、
彼女は、まだあきらめたくないという思いを強く持っており、
体力が回復したら、また治療を受けたいと言ったそうです。

そんなことを言ったせいか、
どこの緩和ケア病棟も受け入れてもらえなかったようでした。
一緒に来ていたご主人が、
「本人の気持ちが前向きなので緩和ケア病棟への入院は断れました」
と言っていました。

これも面白い話なのですが、笑うに笑えない話でもありました。
もう死んでもいいですとあきらめている人の入院は受け入れられるのに、
まだ生き続けたいという希望や前向きな気持ちを持っている患者さんは
緩和ケア病棟への入院を断られてしまうというのは、
患者さんの思いを大切にするという緩和ケアの理想とは裏腹に、
結局は緩和ケアも医療者の都合を最優先するものなのだなと、
その時はちょっとがっかりしました。

また、こんな患者さんもいました。
彼は食道がんの末期で、気管と食道にトンネルができてしまい、
食べたものが気管支に流れこんでしまうため、
よく誤嚥性肺炎を起こしていました。

最初は内科で入院していたのですが、
そこでは当然のごとく絶飲食になってしまいます。
本人は食べたがるのですが、また肺炎を起こすと命取りになると言われ
主治医は飲食を許可してくれなかったそうですが、
あまりに食べさせろと言うので、主治医も匙を投げ、
それならば、もう緩和ケア病棟に行って下さいということになり、
うちの緩和ケア病棟に入院することになりました。

こちらに来てからは、本人の思うように飲食をしてもらっていましたが、
すぐさま誤嚥性肺炎を起こすかと思いきや、
特に問題なく過ごせていました。

1ヶ月半が経った頃に突然、食事が喉に詰まるようになったと言い、
以前も同様な症状が出現したときには、
胃カメラを入れて食道を広げてもらったら通るようになったというので、
急きょ内科の先生にお願いしてカメラをしてもらうことにしました。

胃カメラを入れると、食道には食べ物のカスが残っており、
その横には気管に通じるトンネルがはっきりと認められました。
念のため造影剤を入れてレントゲンを撮ってみると、
造影剤が食道から気管に流れ込んでいるのがはっきりと写っていました。
そのため、食道を広げるどころではないと判断した先生は、
何も処置をせずにそのまま胃カメラを終了しました。

結局、食道拡張術ができないまま病室にもどってきたのですが、
その直後から、食事が食べられるようになったと言って、
また以前のようにおいしく食事をし始めるではありませんか。
これにはちょっと驚きました。

食道の詰まりを改善させるような処置は何もせず、
おまけに誤嚥性肺炎を起こすのが当たり前の状況だったのに、
なぜかまた食べられるようになり、
それから1ヶ月もの間、普通に過ごしていました。
最後は知らない間にスーッと亡くなっていました。

色々と面白い患者さんはいますが、
そのような患者さんは皆さん個性的です。
医者の言うことをおとなしく聞く患者さんよりも
自分の主張を曲げないちょっとわがままな患者さんの方が、
もしかしたら幸せなのかも知れませんね。
このような患者さんたちに会う度に、私はそう思います。

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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