きわめて困難なケースへの対処法①

2015年10月16日07:22

去る10月11日~12日に岐阜の長良川国際会議場にて
第39回死の臨床研究会年次大会が開催されました。
私は12日のシンポジウム「心の援助者を目指して
~困難を抱えた患者さん・家族と逃げないで向き合うために」で、
5人の演者の一人として発表させて頂きました。

私はトップバッターでテーマは
「きわめて困難なケースに対する考え方とその対処法」でした。
10分ほどの発表でしたが、学会発表では珍しく
深刻な話をしているにもかかわらず、会場は爆笑の渦に包まれていました。

多分、私が提示したケースがあまりにもすさまじく、
またそれに対する解決法がとても奇抜で意外性に満ちていたことが
爆笑に繋がったのではないかと勝手に理解しています。

ケースを二例発表し、その経過や実際の対応、考察について述べました。
一例目は大腸がんの男性のケースで、この患者さんは
ナースへの暴言や激怒、1時間以上にわたるマッサージの強要、
1日50~100回にわたる頻回のナースコール
という問題行動がありました。
ここでなぜか爆笑です。
桁外れの問題行動に笑うしかなかったんでしょうか。

この患者さんは一般病棟に入院しており、主治医も私ではありませんでした。
ところがそこの病棟のナースがもうこれ以上は無理ということで、
看護科長が病棟ナースを引き連れ院長室に行き、
この患者さんを何とかしてくれと直談判しました。
その際、私は院長から呼ばれ、何とかしてほしいと直々に頼まれたため
受け入れざるをえなかったといういきさつがあります。

頼まれたのが夜の8時でしたので、
当然私は明日朝にでも患者さんと話をしようと思っていたのですが、
ナースの方から「そんな余裕はありません、今すぐに行って下さい」と
言われたため、やむを得ずその後すぐに患者さんのところに行き、
約1時間半ベッドサイドで話をしました。

その際に話をしたのは、
①今病棟は大変な状況になっていることを説明、
②このままだとナースは疲弊し倒れてしまうことが予想され、
そうなればあなたのケアはもうできなくなることを説明、
③そんなことにならないためにも、先ずはナースコールを
1時間に1回以内(1日24回以内)にするというのはどうだろうかと
提案してみました。

この話をした直後から、なぜか一切のナースコールがなくなりました。
ここでも会場から、驚きとも笑いとも取れるどよめきが湧き上がりました。
薬がほしいときなども、ナースコールを押すことなく、
詰め所まで来て薬を希望するようになりました。
ナースはその度に
「1時間に1回程度ならコールを押してもいいんですよ」と言うのですが、
「みんなに迷惑がかかるからナースコールは押してはいけないと
先生に言われた」と言い張り、決してコールを押そうとはしませんでした。

そして、私との話し合いから3日後、
患者さんは自発的に退院していきました。
ひどく困難と思われたケースが、何ともあっさり解決したという
とても興味深い症例でしたが、
当然私としては、それなりのことを考えながら
彼との話し合いに臨みました。

この患者さんはとても寂しがりやで、
いつもナースに傍にいてもらいたいという思いが強くありました。
一方ナースは、恐怖心のため彼の要求に従っていましたが、
それが逆に彼の行動をエスカレートさせるという
悪循環に形成していったのではないかと考えました。
そこで、この悪循環を切るために、
彼の思い込みを書き換えるという介入を試みました。

つまり、彼の心の中には
「ナースコールを押す=みんなが傍に来てくれる」
という思いが形成されていましたが、それを
「ナースコールを押す=みんなから見放される」
という思いに変わるような介入を行ったわけです。

私としては、コールの回数が減るだけでも、
ナースの負担がかなり軽減されるため、
それだけでも先ずは十分だと思って
思い込みを変えることを意図した説明や提案をしたのですが、
結果は、いきなりナースコールがなくなってしまったので、
正直、私自身も驚きました。

彼の中には、みんなから見放されたくないという思いがことのほか強く、
また、今度ナースコールを押したら、
みんなから見放されるに違いないという強い思い込みが
うまくできたのではないでしょうか。
だからこそ、決してナースコールは押さず、
あくまでも自分で詰め所に出向くということを
やり続けたのではないかと思いました。
(つづく)

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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