懇親会でのバトル

2015年07月28日14:34

先日、ホスピス緩和ケア協会の総会と懇親会に参加してきました。
懇親会では親しい人や話したい人もいなかったので、
料理を食べながらビールを片手に一人寂しく佇んでいると、
昔、九州大学心療内科でお世話になった稲光先生が
声をかけてきてくれました。

顔見知りの人がいるだけでうれしくなり、
ビールもいいペースで進み、
過去の思い出話に花を咲かせていました。
ところがしばらくすると、稲光先生が他の人に呼ばれてしまい、
また一人、取り残されてしまいました。

実はすぐ近くに、誰かと話をしているA先生がおり、
その存在がずっと気になっていました。
以前この先生の著書を読んだことがあり、そこには
代替療法(免疫療法など、まだ有効性が認められていない治療法)や
それに頼る患者さん、家族への否定的な見解が書かれていました。
私とは正反対の考え方だったため、
機会があったら、このことについて
じっくりと話をしたいと思っていました。

そんな思いをずっと内に秘めていた私は
今がそのチャンスだと思い、
思い切ってA先生に声をかけてみました。
「すみませんが、ちょっといいでしょうか」
「先生は著書で『効かない治療に執着することは、現実からの逃避だ』と
書かれていたと記憶しているのですが、それは今でも同じ考えですか」と、
単刀直入に聞いてみました。

A先生は「今も同じです」と言っていたので、
「それは代替療法にすがりたいという患者さんの思いに
寄り添っていないのではないでしょうか」と言うと、
「そう思うのは自由であり、私の考えを押しつけるつもりもありません」
との返事でした。

酔っぱらった勢いとは言え、
明らかにバトルを挑んでいる言い方でした。
自分としてはできるだけ丁重に話をしているつもりでしたが、
質問内容や私の意見は、結構、辛辣で挑戦的だったと思います。

その後、様々な視点から30分くらい話をしていたと思いますが、
そのうちトラブルを起こす患者さんや家族の話になり、
私が「そのような患者さんは結構いるんですか」とたずねると、
それなりにいるとの答でした。

それに対して私の思いを述べたのですが、
それを聞いていたA先生の顔色がサッと変わるのがわかりました。
正確な言い回しは、はっきり憶えていないのですが、
「これが正しい、あれは間違っているという断定的な考え方が、
患者さんや家族との対立を生み、それがトラブルになるんではないでしょうか」
といったような内容のことを言ったと思います。
すると、「それは僕のコミュニケーションが下手だということですか?
それはちょっと失礼じゃないですか!」と、
笑顔を引きつらせ、怒りで大きく見開いた目で私をにらみつけてきました。

これはまずいと思い、
「誤解を招くような言い方をしてしまって申し訳ございません」と謝り、
その場を何とか収めましたが、その後しばらく沈黙が続きました。
結局、最後はA先生が、
「怒ってしまってすまなかった」と言って、その場を立ち去って行ったので、
バトル?はこれで終了となりました。

私としては、コミュニケーションのうまい下手を言ったのではなく、
考え方の柔軟性の大切さを言いたかったのですが、
それはどうも伝わらなかったようです。

もっとも、A先生の本を読んだときに、
代替療法にせよ、患者さんの態度にせよ、
それに対して決めつけるような言い方をしていたことに
とても不快感を憶えていたので、
A先生のそのような断定的な考え方が、
患者さんとのトラブルの原因になるのだと
暗に言いたかったというのも事実です。

やはり、そのような否定的な思いが根底にあると、
どんなに気を遣って話をしているつもりでも
人はつい批判的な言動をしてしまうものですね。

アルコールが入り、抑止力が効かなくなっていたとは言え、
A先生にしてみれば、下っ端の医者に自分の考えを批判されたり、
コミュニケーションの仕方まであれこれ言われたら、
それは不快だっただろうと思います。
その点に関してはごめんなさい、すみませんでした、
と謝るしかありません。

その一方で、ずっと言いたかったことが言えたことで、
私の中では、くすぶっていたわだかまりがなくなり、
A先生に対する気持ちに区切りがついたので、
それはそれでよかったかなと思います。

なにもA先生に自分の考えを改めさせようなどという
おこがましい思いは私にはありませんし、
ほとんどの人は、そう簡単に自分の意見を変えないこともわかっています。
私としては、長年持ち続けていたA先生へのわだかまりを
直接本人に対して吐き出せたことだけで満足なのです。

相手の立場に立って物事を考えるのは大切ですが、
時には言いたいことをはっきり言うのも必要です。
何事もバランスです。
きれい事だけでは人はやっていけません。
今回のバトルを通して、あらためてそう思いました。

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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