希望を支えるコミュニケーションとは

2015年06月25日05:06

6月19日、20日にパシフィコ横浜で行われた
第20回日本緩和医療学会学術大会に参加してきました。
盛大な学会で7800名もの参加者が集まりました。

私は、今回は講演や発表がなかったので、
皆さんのお話をずっと聴いていました。
朝一番に「患者のこころと希望を支えるコミュニケーション」
というシンポジウムがありましたが、
それを聴きながらあれこれ考えたことがあったので、
それについて少々書かせて頂きます。

終末期のがん患者さんに「あなたの希望は何ですか」とたずねても
ほとんどの患者さんは答えることなどできません。
絶望を経験した患者さんが新たな希望を探し、それを誰かに伝えることは
容易なことではありません。
だからこそ、希望を見つけるための手助けが必要になるのです。

ところが、ある演者の人は
「希望を探し、それを伝えるには「考える力」が必要」と言っていました。
確かに患者さんの「考える力」は必要かもしれませんが、
それを末期の患者さんに求めるのはちょっと酷な気がしました。
そうではなくて、希望について患者さんに考えてもらうためには、
医療者はどのような手助けをしたらよいのかということが
重要なのではないかと思いました。

つまり、希望を見出せない状態の中にいる患者さんに
どうしたら希望を見出す「きっかけ」を
作ることができるのかということです。
私は話を聴きながら考えていました。
そのためには、患者さんに対して、
希望につながる事柄をうまく引きだす「質問」をすれば
よいのではないかと思ったのです。

例えば
医者「どうなったらいいなと思いますか」
患者「病気がよくなったらいいなと思います」

こんな、非現実的な答が返ってくることもしばしばです。
どんな答を患者さんが返してくれてもよいのですが、
大切なのは、その背後にある真意をうまく引きだすような質問が
続けられるか否かです。

医者「病気がよくなったら、どんなことがしたいですか」
患者「家族で旅行に行きたいです」
医者「旅行に行くとどんないいことがありますか」
患者「家族との思い出が作れます」

このように「どうなったらいいのか」
「それによってどんなよいことがあるのか」
という質問を繰り返していくことで、
この患者さんの思いの根底にある希望の本質が見えてきます。

このようなやり取りから、
この患者さん場合は「家族との思い出作り」に
希望を見出しているのではと推し量ることができます。
あとは寝たきりになった患者さんにでもできるような
家族との思い出作りは何かないだろうかとみんなで相談するのです。
すると、歌が好きだったおじいちゃんのために
病室内で家族による歌声コンサートを
開催してみてはどうかというアイデアが出てくるかもしれません。

患者さんの「考える力」が大切だと言う前に、
どうしたら、その「考える力」をうまく引き出せるのか、
つまり、どうしたら患者さんに
自分が持っている希望に気づいてもらえるのか、
そのためにはどのようなコミュニケーションをしたらよいのかを
考えることの方が重要ではないかと話を聴きながら思いました。

また別の演者の話ですが、
どのような文脈で語られたものかは忘れてしまいましたが、
患者さんに「何か自慢話をしてください」とたずねればよい言っていました。
これは使える!と思いました。

患者さんに人生を振り返ってもらう場合、
「楽しかった思い出を教えて下さい」とたずねてもよいのですが、
できたら、患者さんが誇りに思っていることを聞き出した方が、
本人の自尊心も満たされるため、より満足感が高くなります。

遠慮がちな人は、普段、自慢話など決してしませんが、
実は誰でも本音では、
自分が達成したことや誇りに思うことを誰かに言って
「すごい」と言ってもらいたいと思っているものです。

だからこそ敢えて「自慢話をして下さい」と言うことで、
遠慮がちな人でも、自分自身がすごいと思っていることを
話しやすくなるという点で
この質問は使えると思ったわけです。

やはり自分で考えているだけでは限界がありますが、
こうして、時々人の話を聴いたりしていると
思わぬアイデアがひらめいたりしていいものですね。
これからもいろいろな人の話や講演を聴いたりして、
「心の治癒力」をうまく引きだすコミュニケーションについて
さらに思索や方法論を深めていきたいと思います。

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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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