医療におけるホリスティックな視点とは

2015年02月28日06:49

私は医療現場において、ホリスティックな視点を大切にしています。
そもそもホリスティックとはどのような意味かというと、
全体とかつながり、バランスといった意味合いをもつ言葉です。
医療の中で考えるならば、
肝臓や心臓といった臓器や部分だけでなく、
心と体のつながりやスピリチュアルな側面、
食事や環境、人間関係といったものも含めた全体的な視点から
人の健康や病気を見ていこうというのが
ホリスティックの意味するところです。

もう少し私なりにホリスティックについて考えていることを述べてみます。
ポイントは三つあります。
第一は医療における様々な視点や考え方を理解するという視点です。
ホリスティック医学を盲信している人の中には
西洋医学を否定する人が少なからずいます。

確かに西洋医学は絶対的なものではありませんし、問題もかなりありますが
少なくとも感染症や救急疾患、外科領域においては
西洋医学はなくてはならない医療です。
肺炎になったらホメオパシーよりも抗生物質を点滴する方が
明らかに治癒率は高くなります。
心筋梗塞の発作を起こした場合、漢方薬やアロマセラピーではなく
心臓の血管にカテーテルを入れる治療の方が
確実に死亡率は低下します。
つまり、西洋医学の治療が力を発揮する病気に対しては
西洋医学的治療をすればよいのです。

その一方で、心身症や生活習慣病といった
ストレスやライフスタイル、心の持ち方や考え方が関係する病気は
西洋医学の苦手とする分野です。
この場合は、カウンセリングや心理療法のような
その人の心に焦点を当てたかかわりが重要になってきます。

もちろんマクロビオティックに代表される食事療法や
ヨガ、気功、呼吸法、瞑想、リラクセーション法、
免疫力を高めると言われる健康食品やサプリメント、漢方、
いわゆる治療的代替療法に含まれる鍼灸、整体、温熱療法、
癒し系代替療法に含まれるアロマセラピーや音楽療法、芸術療法など
西洋医学以外のアプローチもたくさんありますので、
必要に応じてこれらを利用するも大いに結構です。

さらに、末期がんや神経難病、不治の病のように
治癒することが困難な病気の場合には
スピリチュアルなかかわりも役に立つことでしょう。

このように、体、心、気、霊性といった様々な視点から
目の前の患者さんに対して治療的かかわりを考えてく姿勢が
ホリスティックの重要な点のひとつです。
西洋医学を否定したり敵視したりした段階で、
これはすでにホリスティックな医療ではないというわけです。

ホリスティックな視点における二番目のポイントは
患者さんの価値観を大切にするということです。
治療者やセラピストにも得意分野や自分の考えがあるように
患者さんにも自分にあった考えや価値観があるのです。
誰もが自分が正しいと思っているのですが、
実際には、絶対に正しいとか絶対に間違っているというものはありません。
そうであれば、患者さんの思いや価値観も大切にし、
その視点から、治療者はかかわっていくという姿勢が
きわめて重要になってきます。
なぜならば、患者さんは
自分の考えを理解してくれる治療者を信頼するものであり、
その信頼感が患者さんの自然治癒力を高めることにもつながるからです。

ところが治療者はどうしても
自分の得意な治療法を患者さんに押しつけがちです。
サプリメントにせよ食事療法にせよ、整体や鍼灸にせよ、
患者さんの意向や価値観を考慮することなく
治療者がよいと思ったものを一方的に勧める傾向があります。
これでは、たとえどんなに代替療法の知識や技術があったとしても
単なる「押しつけ医療」にすぎず、
とてもホリスティックな視点を持っているとは言えません。

ホリスティックの三番目のポイントは
つながりや関係性です。
つまり、患者さんはどのようなつながりで気持ちが楽になるのか、
医療者はどのようなかかわりをすることで
患者さんに安心感や信頼感を持ってもらえるのか、
どのような医療環境を提供すれば
患者さんに満足感をもたらすことができるのかといったことです。

人の心は、家族、友人、社会、自然といったつながりや環境要因によって
よくも悪くも大きな影響を受けることになります。
これは、患者さんが最も心地よく過ごせるような
つながりや関係性を持つことができたならば
「心の治癒力」が引きだされ、延いてはそれが
「体の治癒力」を高めることにもなるということを意味しています。

だからこそ、治療者は患者さんとの関係性を大切にしつつ
患者さんに安らぎや希望をもたらすようなつながりにも
目を向ける必要があるのです。
このようなつながりや関係性の重要性を認識し
それを意識的に治療に活かそうと思っている治療者は
ホリスティックな視点を持っている治療者と言えるでしょう。
当然のことながら、ここでは良好なコミュニケーションが
重要な役割を果たすことは言うまでもありません。

ホリスティックな医療というと、
様々な代替療法を駆使して自然治癒力を高め、
それをもって病気を治すといったイメージがありますが、
もしも上記の三つの視点がなかったとしたならば、
それはホリスティックな医療ではなく
単なる「寄せ集め医療」や「独りよがり医療」にすぎません。

逆に西洋医学の一般的な医者であったとしても
患者さんのやりたいと思う代替療法にも理解を示し、
安心感や希望をもたらす医者がいたとしたならば
これはとてもホリスティックな視点を持った医者だと私は思います。
皆さんはいかがでしょうか。
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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