プラシーボは偽薬ではない!

2014年07月23日16:10

先月、神戸で開催された第19回日本緩和医療学会に行ってきました。
その際、福島県立医大整形外科の半場道子先生の講演
「プラシーボは偽薬ではない」という話しが予想以上の興味深かったので、
ここで紹介させて頂きます。

半場先生は、痛みという主観的な感覚を、
脳の働きを画像で見る方法(機能的脳画像法)を利用して、
研究している専門家です。

人は体のどこかに痛み刺激が加わると、
脳内でドパミンという神経伝達物質が放出され、
それに伴ってオピオイド(脳内麻薬)も分泌されます。
それが脊髄の中を通っている疼痛を抑制する神経(下行性疼痛抑制系)を介して、
痛みの感覚を軽減してくれているのです。
つまり、この働きがあるお陰で、
私たちが感じている痛みは、我慢できる程度に抑えられているのです。

このときに分泌されるオピオイドは、状況にもよりますが
ときにモルヒネ10mg/kgに匹敵する鎮痛効果があることもわかっています。
通常、がん患者さんの痛みに対してモルヒネ10mg程度を処方しても
十分痛みを取ることはできますので、このオピオイド量は、
通常使用するモルヒネの50倍もの鎮痛効果があることになります。

なお、モルヒネが痛みを抑える仕組みもこの下行性疼痛抑制系が関与しており、
痛みに対してモルヒネが投与されるとこの神経系が機能し、
痛みがとれたと感じるわけです。

さて、ドパミンという物質ですが、これは
恋をしたとき、いい音楽を聴いたとき、仕事をやり遂げたときなどにも放出され、
そのときには幸福感や高揚感、達成感を味わうことになります。
つまり、うれしいときや気分がよいときにはドパミンが分泌されますが、
同時に、オピオイドも分泌されるため痛みを軽減させることもできるのです。

さて、ここでプラシーボの話しに移りましょう。
プラシーボとは乳糖やデンプンの粉のような
全く鎮痛作用のない物質を意味しますが、
これを痛みのある人に投与すると、
痛みが軽減することがわかっています。
これをプラシーボ反応(効果)と言います。

なぜ、このような現象が起きるのかを
脳画像法により調べてみると、
やはりドパミンに伴いオピオイドが分泌され
これが疼痛抑制系の神経を介して、
痛みを感じなくしてくれていることがわかります。

この際、ドパミンの分泌を促したのが、
「効くかも知れない」という「思い」です。
つまり、期待感や希望がドパミンを分泌させ、
それが脳内麻薬であるオピオイドを分泌し、痛みを軽減してくれたのです。
さらに様々な研究から、その期待感が強ければ強いほど
ドパミンの分泌量が増え、痛みが軽減する程度も強くなることがわかっています。

では、このドパミンを分泌させる期待感や希望といった感覚は
プラシーボを処方されたときだけに生まれるものでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
ありとあらゆる場面で生じうるものですが、
とりわけ大切になるのが、治療者が患者さんとかかわる場面です。

患者さんが治療者に、安心感や信頼感、期待感、ときめきを感じれば、
自ずとドパミンが分泌され、痛みの軽減につながるわけですから、
治療者の雰囲気や態度、コミュニケーションは
痛みの治療において、きわめて重要な要因なのです。

通常、鎮痛剤や代替療法により痛みが消失した場合、
それらの効果により痛みが消えたと理解します。
しかしこの研究からわかることは、
治療者やセラピストが醸し出す安心感や信頼感、
コミュニケーションを通して得られる期待感や納得感、希望といったもがすべて
痛みを軽減させることにつながっているということです。

つまり治療者のかかわり方やコミュニケーションにより
患者さんがどのような思いを抱くかによって
治療効果が大きく変わってきてしまうということなのです。
ですから治療者やセラピストは常にこの点を十分に認識しつつ、
患者さんやクライエントにかかわることが重要になってくるわけです。
みなさん、いかがでしょうか?
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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