東豊先生のP循環療法

2013年04月25日07:58

先日、東豊先生の「リフレーミングの秘訣」という本を読みました。
心理療法をある程度知っている人が読む本ですが、
内容は極めて濃く、東先生らしさ満開の本です。
ただし今回はリフレーミングの話しではなく、
この中で述べられているP循環療法のお話しです。

東先生はシステムズアプローチという心理療法の大家であり、
特に臨床家としてとても優れており、
数多くの困難な症例を治療してきた経験を持つセラピストです。

私が九州大学心療内科から関西に戻ってくると同時に、
東先生は臨床心理士として赴任されているので、
実際には一緒に仕事をしたことはないのですが、
個人的には多少知っている先生です。

東先生は一時、だいぶ落ち込んでいた次期があったようなのですが、
そこから這い上がってくる自己体験から、
①心の状態を変えるだけで身体や環境が変わること、
②心の状態を変える方法は意外と簡単なこと、
に気づき、その経験から生まれたのがP循環療法なのだそうです。

ここで言うP循環とはボジティブ(Positive)のPであり、
要するに愛、思いやり、感謝、喜び、安心、信頼、自己肯定感といったP要素が
心の大部分を占めていると幸運な出来事が生活場面に現象化し、
それがさらにP要素を強化するため
心と現実の間に善循環が生まれという考え方です。

逆に、怒り、不満、妬み、不安、憂うつ、自己否定、利己心といったN要素が
心の中で大きな割合を占めると病気や問題、不幸な出来事が
現実の生活場面に現象化されるというのです。
これがN循環です(Nはもちろんネガティブ(Negative)のNです)。

東先生は心理療法を学ぶ学生やセラピストの基礎トレーニングに
これを利用できないかと考えました。
P循環の中にいるセラピストが
N循環の真っ只中て苦しんでいるクライエントと面接すると、
セラピストはクライエントのP要素に目が向くため、
セラピストとクライエントとの間にP循環が生まれるというのです。
その結果、クライエントの心もP要素が多くなるため、
自ずと問題や症状が消えていくというのです。

そのためにはセラピスト自身がP循環を起こす人間、
つまり心がP要素で満ちた人間になる必要があるのですが、
そのための方法も書いてあります。
ところが、これが昔の東先生らしからぬ?とてもユニークな方法なのです。

それは、神様でもご先祖様でもサムシング・グレートでもよいのですが
「神様、いつもありがとうございます」というように
何事ににつけ神様に感謝をすればよいと言うのです。
これは宗教を信仰するとか神を信じるという意味ではなく、
いつでもどこでもP循環を起こすことが目的だというのです。

これ以外にも人に「ありがとう」と感謝の言葉を述べるとか
席を譲るなどのよい行いをするという方法も書いてありましたが、
一番簡単なのが神様と自分の間にP循環を作る方法だと言うのです。

これを読んで笑った人はP満開、呆れた人はN満開だそうで、
このように読者をそれとはなしに引き込むあたりも
東流のおもしろさであり、とても感心させられるところです。

私はこの本を読んで、自分が今教えているホリスティックコミュニケーションと
とても近いものを感じ、ちょっとうれしくなりました。
私の場合、神様は持ち出さないのですが、
日常の「見え方」が変わってくるということはよく言います。

セミナーに参加された方ならわかると思うのですが、
何が何だかわからないうちからカンニングペーパーと称する
意味不明な質問文が羅列している一枚の紙切れを手渡され、
それに従ってセラピストがクライエントに質問するというワークがあります。

そこには例えば
「どんなときにうまくやれましたか」というような質問文が書いてあるのですが、
この質問に答えようとするとクライエントはいやが上にも
自分の「うまくやれていること」に目を向けざるをえないのです。
つまり、この質問はクライエントの「できていること」を引きだす質問なのです。
このような質問がたくさんあるのですが、
これらの質問にクライエントが答えることにより、
自分の中の「できていること」に気づいたり発見したりするのです。

とにかく8日間のセミナーは、様々な問題を抱えているクライエントから
いかにして「できていること」を引きだすのかをひたすら練習するのです。

ところがこのセミナーの参加者はあるとき不思議なことに気づくのです。
それは何かというと、日常の「見え方」が変わってくるというのです。
今まで欠点しか見えなかった上司の長所に気づくようになったりするのです。
これは「できていること」を引きだす質問ばかりをしているうちに
「できていること」に目を向ける神経回路が脳の中に
形成されてきた結果ではないかと思っています。

だからこそ、知らず知らずのうち
「できていること」に目が向いてしまうようになり、
そうなると同じ上司を見ていてもポジティブな側面が見えてきてしまうのです。
相手の肯定的な側面が見えてくると、こちらの気持ちも楽になり、
同時に相手に対する態度や行動にもよい意味での変化が起こります。
その結果、もしかしたら上司が自分を
褒めてくれるというようなことも起こるかもしれません。
そうなれば当然、その人もさらによい気分になります。
これは東先生の言う、まさにP循環そのものです。

神様とP循環を起こすという発想も私は好きなのですが、
「できていること」を引きだす質問をする練習を繰り返すことで、
相手のP要素に自ずと目を向けてしまうような神経回路を
脳の中に作ってしまうという方法でも
P循環が起こせる自分になれるのではないかと思っています。

でも、人の幸せということを考えると、
行き着く先は結局ここになるんだなあとつくづく思います。
「引き寄せの法則」でも「ホ・オポノポノ」でも
みんな同じことを言っているんですよね。
多分、自分の心にできるだけP要素を多く持つことができさえすれば
P循環(私は「善循環」と言っています)が生まれ、
自ずと人は幸せになっていくというのは、
絶対的真理ではないにせよ、
ある程度は真理を言い表しているのかもしれないなあと、
真理の嫌いな私でも、何となくそう思うようになってきました。
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テーマ : モノの見方、考え方。
ジャンル : 心と身体


プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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