人の心は機械ではありません!

2012年10月28日09:35

みなさんは、「人の心と機械は同じものですか」とたずねられたら、
そんなことあらためて言うまでもなく、
全く違うものに決まっていると答えるでしょう。
ところが、どうも同じものだと思っている人が少なからずいるのです。

ここでちょっと考えてみて下さい。
例えば、あなたはパソコン修理の専門家であり、
動かなくなったパソコンの修理を依頼されたとしましょう。
当然、動かなくなったということは何か故障の原因があり、
それを突き止め、修理するなり部品を交換するなりすれば
再びパソコンは動き始ると考えるでしょう。
実際、そうすればパソコンはまた動き出します。

では人の心はどうでしょう。
例えば、人から頼まれると嫌と言えず、
いつも同僚から仕事を押しつけられるはめになり、
どうして自分はこんなに情けない人間なのだろうかと
嘆き悲しんでいる女性がいたとしましょう。
そんな彼女が「嫌なことは嫌だとはっきり断れる自分になりたい」と思い、
あなたに相談してきたとします。

さて、このような彼女の相談に対してあなたはどう応えますか。
もちろん相手の気持ちに共感しながら、先ずは話しをじっくり聴くでしょう。
ここまではOKです。でもこれで終わってしまったら前に進みません。
問題はここからです。
彼女は、嫌なことは断れるようになりたいと思っているのですから、
それをどのようにしたらよいのか、こちらも考える必要があります。

そこで、嫌なことでも断れないという
彼女の問題の根底に横たわっている原因を見つければ、
この問題は解決できると考え、それを探るべく
「どうしてあなたは頼まれると断れないのだと思いますか」と質問し、
断れないようになってしまった原因を探しだそうと思うかもしれません。

そんな質問をしながらいろいろと話しを聞いてみると、
小さい頃からいつも両親に怒られてばかりいて、
彼女は自分に自信が持てないでいることがわかったとしましょう。
するとあなたは、自分に自信がもてないから
彼女は断れないのかもしれないと考えるかもしれません。
でも、断れないのはそれだけが原因だとは限りません。
まだ他にも、何か断れない理由があるかもしれません。
そこでもう少し詳しく小さい頃のことを聞いてみようと思うかもしれません。

もしもそのようなことを考えながら
彼女とのやり取りを進めていくのであれば
あなたは人の心の問題を
機械の故障と同じようなものだと考えていることになります。
なぜならば、機械の故障の原因を特定するのと同じように、
彼女が人からの頼み事を断ることができないのは、
断ることをためらわせる何かがあるからだと考え、
それを見つけ出そうと彼女にいろいろな質問を投げかけているからです。

その結果、彼女の自信のなさが原因として浮かび上がり、
それを引き起こしたのは
どうも幼少時に両親から怒られてばかりいたからではないか
という仮説にまでたどり着きます。
しかし相手は人間の心という複雑な存在ですから、
これが唯一の原因だとは思えず、
まだその奥に何か本当の原因が隠れているのかもしれないと思い、
さらなる原因の探求を始めることになります。

まさにパソコンの修理をするための原因探しと同じ考え方で、
心の問題を解決しようと思っているのです。
機械と心は全く異なるものだとわかっていても、
今までのものの考え方の習慣から、つい問題の原因に目を向けてしまい、
それを探し出すことが問題の解決に結びつくと錯覚しているのです。

たとえこのような視点から原因らしきものが見つかったとしても、
パソコンの修理のようにその原因を取り除くことはできません。
なぜならば、両親から怒られてばかりいたという
過去の体験を取り除くことはできませんし、
自信がない心を自信のある心に取り替えることもできないからです。
当然、嫌と言えない今の彼女の心も、
機械の部品のように交換可能であるはずがありません。
つまり、心の問題の原因らしきものを見つけることができたとしても、
彼女が希望する「嫌なことは嫌だと言える自分」に変えることなどできないのです。

人が抱えている問題を解決しようとする場合、その問題の原因を探し出し、
それを取り除くことで問題が解決できると考えがちです。
しかしこれは対象が機械のように
意志や感情を持たない「もの」である場合には当てはまりますが、
「人の心」が関与する問題に対しては当てはまりません。
なぜならば、最終的にはその人の思いや考え方を変える必要がでてくるからです。

ところが人の心は機械の部品のように交換可能ではありません。
夫婦喧嘩の原因が、かりに自分の身勝手さにあるということがわかったとしても、
自分の性格や態度をそう簡単に変えられないのと一緒です。
結局、人の心がかかわる問題は、いくら原因を探して、
それを見つけ出したところで、結局は問題の解決にはならないのです。

ではどうしたらよいのでしょうか。
それについてはいろいろなところで書いたり話したりしているのですが、
その話をしだすとまた長くなるので、今回はこれで終わりにします。
いずれの機会をお楽しみに。
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テーマ : モノの見方、考え方。
ジャンル : 心と身体


プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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