「幸せの遺伝子」を読んで

2012年07月12日07:54

筑波大学名誉教授の村上和雄先生が書いた
「幸せの遺伝子」(育鵬社)という本を読みました。
これはとても読みやすく、なかなか面白かったのでちょっと紹介させて頂きます。

村上先生は遺伝子解析の専門家であり、
「レニン」という酵素の遺伝子の解読に世界で初めて成功した人です。
一方、両親は熱心な天理教の信者であったため、
彼自身も天理教の教えの中で育ったそうです。

そんなこともあってか、
村上先生は昔から「サムシンググレート」(ある偉大な存在)という言葉を使い、
科学と宗教の橋渡しをするような本をたくさん書いており、
これも、その中のひとつです。

この本で、面白かったのは遺伝子と心の関係についてです。
ご存じのように、人は約60兆の細胞から構成されています。
そのひとつひとつの細胞の中には、すべて遺伝子が組み込まれており、
そこにはすべて同じ情報が書き込まれています。

しかし全く同じ情報を持った遺伝子なのに
なぜ、ある細胞は肝臓になり、ある細胞は髪の毛になるのでしょうか。
それは全遺伝子情報のうち、肝臓では肝臓の役割を果たす情報だけが働き、
他の機能は封印されているからなのです。

つまり、細胞の中にある遺伝子は、
目覚めて活動している部分と眠っている部分があり、
条件によって、そのスイッチがオンになったりオフになったりするのです。
ですから、肝臓の細胞の中にも髪の毛や指を作り出す遺伝子はあるのですが、
そのスイッチがオフになっているので、
肝臓からは髪の毛や指は生えてこないのです。

発がん遺伝子も誰もが持っているものですが、
これは通常、スイッチがオフになっているから発がんしませんが、
何かの条件によって、スイッチがオンになると発がんすることになります。
その逆で、がん抑制遺伝子というものもあり、
これはがん細胞が作られるのを抑制する働きがある遺伝子です。
この遺伝子のスイッチがオンであれば発がんは抑えられることになります。

では、このスイッチをオンにしたりオフにしたりするのは一体何なんでしょうか。
それは環境(物理的、化学的)やこころ(精神)なのです。
遺伝子の主な働きは、タンパク質を作ることであり、
これにより、からだのありとあらゆる細胞やホルモンなどが作られています。

例えば熱という物理的環境要因により、
遺伝子のスイッチがオンになることが以前から知られており、
火傷で破壊された皮膚組織が自然に再生されてくるのも、
これに関連する遺伝子のスイッチがオンになるからだと考えられています。

インスリンをはじめとする各種ホルモンも、いつ、どの細胞で、
どれだけの量を作るかを事細かく指示しているのが遺伝子であり、
それもすべて、スイッチのオンとオフによって調整されているのです。

また、喫煙者が肺がんになるリスクが高いと言われるのは、
ニコチンやタールなどの化学物質が、
眠っていた発がん遺伝子のスイッチをオンにする可能性が高まるからです。

このように環境要因は遺伝子に大きな影響を及ぼしますが、
村上先生が最も関心を持っているのが、
精神的要因が遺伝子に及ぼす影響です。
つまり、感動や喜び、イキイキ感といった肯定的な心の状態は
よい遺伝子のスイッチをオンにし、
悲しみや苦しみ、不安といった否定的な心の状態は
悪い遺伝子のスイッチをオンにすると言うのです。

例えば、心地良いと感じる時には、快感ホルモンが分泌されますが、
これも遺伝子にそのような指令が情報として書き込まれているからこそ、
快感ホルモンが分泌されるのです。
また、感動や感謝、喜びといった感覚は、
自然治癒力に関係する遺伝子のスイッチをオンにしている可能性があります。

私たちの遺伝子には、すべての情報が組み込まれていますが、
そのうち現在使っていると思われる遺伝子は、
全遺伝子情報のわずか5~10%にすぎません。
残りの90~95%は何をしているのかよくわからないのです。
逆に言うならば、そこにどんな可能性が潜んでいるか計り知れないと言うことです。

つまり、物理的、化学的環境要因も遺伝子のオンオフに影響を与えますが、
人の心の状態は、それに勝るとも劣らぬ影響を遺伝子に与えており、
その可能性はまだまだ未知数だということです。
「火事場のばか力」とか「ルルドの泉の奇跡」など、
常識では考えられないことは世の中にはたくさんありますが、
実は、そのような信じがたい力や能力を発揮するプログラムも
遺伝子情報の中に書き込まれているからこそ、
そのような現象が起こるのです。

つまり、緊急事態に直面したときに
「何とか子どもを救わなくては!」という緊迫した心の状態が
その遺伝子のスイッチをオンにするからこそ、
その瞬間車を持ち上げ、下敷きになった子どもを助けることができるのです。

しかし、未だに「火事場のばか力」に関わる遺伝子が
どこにあるかなどはわかっていません。
われわれの遺伝子は、まだまだたくさんの秘められた可能性に満ちており、
いざという時の自分らの出番に備え、
いつでもその力が発揮できるようにスタンバイしているのです。
その未知なる可能性を秘めた遺伝子のスイッチをオンにするのが、
まさに私たち自身の「こころ」なのです。

特に、何かを求めたり目標に向かって進んだりする気持ち、ハングリー精神、
人を喜ばすことによる自分の喜び、感謝や感動といった心の状態は、
そうした潜在的な可能性を秘めた遺伝子を呼び覚まし、
自分でも信じられないような自分に変わり得る可能性を秘めていると
村上先生はこの本で述べています。

自分のこころが、細胞の中にある遺伝子に働きかけ、
自分自身を変えることができるなんてすばらしいではないですか。
この本を読んで、こころの潜在力と体に備わっている未知なる可能性の存在に
あらためて感動しました。

なお、遺伝子の不思議に関心のある方は
「心や環境が遺伝子をコントロールしている!」(2010年4月15日)のブログも
ご参照ください。
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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