相手の思いに寄りそうことが大切だと言うが…

2012年04月18日07:20

よく、医療やカウンセリングの世界では
相手の思いに寄り添うことが大切だと言われますが、
確かに、相手の思いを大切にすというのは医療やカウンセリングの基本であり、
コミュニケーションスキルを教える際にもそのことは強調します。

しかし現場では、必ずしもそうすることが良いとは限りません。
例えば、目の前に「早く死んでしまいたい」と言う患者さんがいたとしましょう。
表向きは「死にたいくらい辛いんですね」と思いをくみ取りつつも、
頭の中では、どうしたら死なせてあげられるかではなく、
どうしたら生きる方に目を向けてもらえるかということを考えているのです。
相手の意向に100%沿ってしまったら自殺を助長しかねません。

このように、相手の思いを無条件に受け入れようとするならば、
明らかに問題を生じる場合や
悪い方向に進むのを手伝ってしまう場合が出てきてしまうのです。
ですから、相手の意向に寄りそうという形を取りながらも、
実際にはこちらが適切だと判断する方向に、暗に誘導することも必要なのです。

コミュニケーションスキルについても同様のことが言えます。
相手の意向に沿うような対応をしながらも、
実は、こちら側もある程度の解決のための方向性を持っており、
そちらの方向に目が向くよう、それなりの誘導をするわけです。
困難な問題を抱え、二進も三進もいかない状況に陥っている場合、
こちらがある程度、解決の糸口になるような方向性を示してあげないと、
いつまで経っても泥沼から這い上がって来られないのです。

つまり、相手の気持ちに寄りそうということが大切だと言いながらも、
場合によっては、自分の意向に誘導することも必要だということです。
誘導と言うと、ちょっと誤解を招きかねない言葉遣いですが、
道に迷った人を、適切な方向に誘導するという意味合いであり、
その意味での誘導は大切だと思っています。

ただしその際、注意しなくてはいけないことがあります。
それは、自分の意向の押しつけになってはいけないということです。
それは誘導ではなく強要です。
こちらの意向をそれなりに提案することもありますが、
選択するのはあくまでも相手です。
たとえ誘導的であったとしても、
その方向性が相手の意向にあっているのかどうかを、
その都度確認しながら前に進めていく必要があるということです。
決して強要になってはいけません。

つまり、相手の思いに寄り添うという姿勢は大切ですが、
実は、自分の意向や価値観、方向性を持っていることも必要なのです。
問題を抱え、どうにもならない状況に陥っている人や
間違った方向性に向かって進もうとしている人とかかわる場合、
こちらがある程度の価値観や方向性を持っていないと、
相手に巻き込まれてしまい、適切なサポートがしてあげられないのです。

相手の思いを大切にするという基本姿勢を根底に据えながら、
その一方で自分の方向性や価値観もしっかり持っているという姿勢が、
問題を抱えた人とかかわる際には必要なのではないのでしょうか。
以前は、無条件に相手の思いに寄り添うことが大切だと思っていましたが、
今は自分の信念や意向を根底に秘めつつ、
相手の思いに寄り添うことが大切だと思うようになりました。
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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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