映画「沈まぬ太陽」を見て

2009年10月29日07:32

先日、山崎豊子原作の映画「沈まぬ太陽」を見た。
主人公の恩地役を演じているのは渡辺謙だ。
彼は、国民航空の労働組合委員長をしていたが、
そのため会社から疎んじられ、
10年に及ぶ海外勤務を余儀なくされた。

その後本社復帰をはたした彼は、
組織の立て直しを図るべく、会社の腐敗と戦う。
地位や名誉、金、女と、様々なものが絡み合いながらも
恩地は、どんなことがあろうと最後まで自分の信念を貫き通す。
その代償として、家族が犠牲になろうとも。

恩地は、ジャンボ機墜落事故で亡くなった人々の遺族に対しても
誠意を込めて、一生懸命に尽くしていた。
あれだけ自分の信念や思いやりを持って生きた人生であれば、
彼の最後を迎えるときに自分の人生を振り返ったならば、
つらい人生ではあったけど、本当によくやってきたなという、
感慨深げな満足感があるに違いないと思った。

そんな思いを抱きながらこの映画を見ていたが、
ふと、自分の人生はどうだろうかと考えてしまった。
自分の死が近づき、あらためて人生を振り返ったとき、
いろいろあったが悔いはない、満足感のある人生だった、
と思えるであろうかと。

答えは、否である。
端から見たら、それなりの成功をおさめ、
それなりのこともしたように見えるかもしれないが、
今のような生き方を続け、最後の時を迎えたならば、
きっと、後悔の念で一杯になるに違いないと思った。

確かに今まで色々なことはやってきた。
医者になり、心身医学や緩和ケアもそれなりにやってきた。
その一方でホリスティック医学と深く関わり、
コミュニケーションにも強い関心を持ってセミナーも開催している。
確かに、これらへの取り組みはある程度評価できるかもしれない。
でも、自分の中では、何かしっくりこないものがあるのだ。

間違ったことをしているわけでもない、努力していないわけでもない。
でも、そこには何か大切なものが足りないのだ。
それが、恩地のような誠実さや一生懸命さなのかもしれないと思ったのだ。
バカ正直に生きることがいいとは限らないが、
その一方で、真面目さや真剣さも大切だと思っている。
しかし今の自分は、どうもその点には欠けている気がする。

若い頃は、もっとがむしゃらで真面目だった。
しかし年を取るにつれ、忙しくなり、仕事量も増えてくる。
すると、今度は適当にこなすことを覚えてくる。
それがいつの間にか、当然のことのようになってくる。
昔は自分を大切にするなどということは、考えたこともなかった。
でも今は、自分も大切にしなくてはいけないという大義名分のもと
上手に生きていくことを覚えてしまった。
それだと、なんか人生を適当に生きているだけのような気がするのだ。

最近よく映画を見るのも、
もしかしたら、心の奥底に押し込んでしまった
そうした純粋さや一生懸命さを呼び覚まそうとしているのかもしれない。
五十歳という節目の時を迎え、もう一度昔の自分を思い出す、
そんな作業が、今は必要な時期なのかもしれない。
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テーマ : こころ
ジャンル : 心と身体


プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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