抗生物質を考える

2015年11月25日12:42

今月11月16日~22日まで
「抗菌薬啓発週間」だったことをご存じでしたか?
これはWHO(世界保健機関)の呼びかけにより、
不適切な抗菌薬(抗生物質)の使用をできるだけなくすための
取り組みとして、今年、初めてスタートしたものです。

ご存じのように、抗菌薬は細菌感染に対する治療薬ですので、
風邪や気管支炎などのウイルス疾患には全く効果がありません。
(細菌とウイルスは全くの別物です)
それにもかかわらず、病院に行くと
医者は風邪に対しても安易に抗菌薬を処方したり、
また患者さんも抗菌薬を欲しがったりする傾向にあります。

中には、風邪をこじらせて肺炎になるといけないから
予防的に抗菌薬を処方するという医者もいますが、
このような予防効果があるという医学的根拠は全くありませんし、
学会でもそのような使い方はしてはいけないとはっきりと言っています。
にもかかわらず、多くの医者が
まだまだ安易に抗菌薬を処方しているというのが現状です。

ではなぜ、安易に抗菌薬を使ってはいけないのでしょうか。
それは抗菌薬を使えば使うほど耐性菌を生み出すことになり、
抗菌薬が効かない細菌が増えてしまうからです。
もちろん、耐性菌を殺す新たな抗菌薬も開発されていますが、
いずれ、その抗菌薬も効かなくなる耐性菌が新たに生まれます。
つまり細菌と抗菌薬は延々イタチごっこを繰り返しているのです。

人類は細菌を相手に、終わりも勝利もない、
また後戻りもできない戦いを始めてしまったのです。
近い将来、有効な抗菌薬がなくなり、
今まで治せた肺炎も治すことができず、
ただ死ぬのを待つだけという事態が起こらないとも限りません。

このような最悪な状況になりつつあることがわかっていながらも、
残念ながら、このイタチごっこはもう止められないのです。
今さら、抗菌薬を全く使わないようにするわけにはいかないからです。

ではどうしたらよいのか。
今はただ、そのような最悪の時期を
できるだけ先送りできるように努力するだけです。
そのためにも耐性菌の蔓延を防ぐ不適切な抗菌薬の使用や服用を
できるだけやめましょうと呼びかけをしているのです。

不適切な抗菌薬の使用をやめるというのは
決して根本的な対応策ではありませんし、
これにより耐性菌の問題が全て解決するわけでもありません。
ただ、その間に新たな対応策が見つかることを期待するしかありません。

私はこの問題を解決するためには
人が今一度、自然治癒力の重要性に目を向ける必要があると思っています。
つまり、80%の病気は勝手に治るのです。
それはまさに自然治癒力のなせる技なのです。
医者も患者も、そのことをいつの間にか忘れてしまい、
病気は薬を飲んで治すものだという
大きな錯覚をするようになってしまいました。
これが安易に抗菌薬を使用する流れにもつながっていると思っています。
ですから、不適切な抗菌薬の使用をやめると同時に
自然治癒力を見直すという運動も始めるべきではないかと思っています。

話を戻しますが、この「抗菌薬啓発週間」の取り組みは
日本でも国立国際医療研究センターの国際感染症センターが中心となり、
「その抗菌薬、本当に必要ですか?」と書かれたポスターを作るなどして、
医師や私たち市民に対して適正使用を促す運動として行われています。

抗菌薬啓発週間ポスター


皆さんも、今一度、抗菌薬を安易に飲んでいないか思い返してみて下さい。
そして、これを機にもう一度、自然治癒力の偉大さに目を向けてみて下さい。

なお、啓発活動のためのビデオも作られています。
これも是非見て頂けたらと思います。
医者側に多少配慮した作りにはなっていますが‥



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プロフィール

黒丸尊治

Author:黒丸尊治
もともと心療内科医でしたが、縁あって今は緩和ケア医として仕事をしています。もともと、コミュニケーションや「心の治癒力」に大変興味をもっており、今はホリスティック医学にもかかわっています。どちらかというと、のんびり屋でマイペースです。あまり人と同じことをしたくないという、天の邪鬼なところあり。
ホリスティックコミュニケーション実践セミナーHPはこちら。
http://holicommu.web.fc2.com

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